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競馬コラム

心地好い居酒屋

2019年07月31日(水)更新

心地好い居酒屋:第71話

参議員選挙の投票率が50%に届かなかった。選挙が終わった後、その原因をテレビメディアはあれこれ検証してはいたが、そのテレビに主な原因があったことは確かだ。

“京アニ”の痛ましい事件報道はともかく、ジャニーズ事務所社長の死や吉本問題をかくも取り上げる必要があったかどうか。争点を含む選挙関係報道が少な過ぎた。“報道率”が低かったのである。

ついでながら…。と遠野は思う。吉本騒ぎに至っては週が変わったこの26日も民放は朝から<ああでもない、こうでもない>の喧々囂々状態。それでも「吉本」と維新の会=大阪、「吉本」と国の関係にまで突っ込み、癒着ありやなしや、共同事業への税金投入の論議がなされるのなら少しはメディアとして、いやジャーナリズム本来の役目に嘴だけでも突っ込めたことになるのだが…。

“権力の番人”を最近のテレビに求めるのは改竄官僚に徳を求めるようなもんか―。久々の快晴は嬉しい限り。それでも心が晴れないのは梅雨寒が続いたせいだけではなさそうだ。

東銀座駅から「頑鉄」まではホンの数分とはいえ、7時前の新大橋通りは車がビッシリ。比例して排気ガスが歩道にまで張り出しており、遠野は思わずマスクの鼻を挟みガスの進入を警戒した。時に“憎悪”(ぞうあく)を起こす肺気腫を気にしての咄嗟の反応だ。これだけの渋滞は交通規制のせいである。来年のオリ・パラに向けての予行演習とか。迷惑このうえない。

左に折れて路地に入ると気分的だろうが、ガスが薄くなったようでチョッピリ安心した。「頑鉄」前の縁台に人影がないところを見ると親爺の喫煙タイムは終わり、すでに客も入っているようだ。

案の定というか、ドアを開けると窓際には例のゲーム屋が5人。その隣には“パンちゃん”こと木村さん一行が3人、我が指定席もすでに3人が“今や遅し”と遠野を待ち構えていた。

遠野は5人には黙礼、木村さん達に「久し振り」で、最後に「お待たせ」と言い阿部秘書の後ろを周り、席に着いた。皆んなの「今晩は」の笑顔のおかげで、今までのモヤモヤが吹っ飛んだ。“病は気から”というのは的を射ている。

テーブル上はビールと枝豆に切り干し大根と油揚げ、人参の煮物だけ。「親爺、アレは?」「それがさ。さっき連絡があって渋滞が酷くて7時半ぐらいになるらしいんだ。平謝りだし文句言っても始まらんだろ。今、旨い鮑を調理してる所よ」。残った3人が一斉に遠野を見た。

「この日のこの時間のために函館の『むらかみ』にウニを注文しておいたの」。遠野が告げると梶谷が「凄い!嬉しい」とハシャぐ。阿部秘書もニッコリだ。

「それより待たせて悪かったね。冷酒にしよう」と言った時には、仲居がグラス4つと「洗心」、それに新しいビールを持って立っていて「すぐに鮑ができるそうです」と。

それぞれのグラスを満たし「改めて」でグラスを上げ、一口つけた所に、親爺と仲居で白いガラス鉢を運んできた。大きい鉢には氷の上に角切りにした真っ白な鮑と丸い細切りの胡瓜が、小鉢には落花生の空みたいな形の物に山葵が添えられている。「こっちは蒸した肝」と親爺。続けて「どちらも味はついてるから、そのまま食って」と説明して座り込んだ。

昔の親爺の“懐石”を彷彿させる出来映えだ。阿部秘書が「綺麗!涼しそう」と驚けば梶谷は、すでに箸を持ち「美味しそう」と言って肝を取り上げた。「やはり見た目が綺麗じゃないと。料理も女性も」と遠野。「あら、それはセクハラ発言になりかねませんよ」。阿部秘書が笑う。受けて梶谷が「でも、遠野さんは正直な人だから許してあげる」と上目遣いに舌をチラリ。機嫌のいい証拠だ。

「お酒が染みこんで苦みとの調和が素晴らしいです」。珍しく殊勝な口振りの梶谷だ。真っ白の鮑を食した阿部秘書は「歯ごたえのある柔らかさで上品、ホント」と、これまた絶賛。

「ヘヘッ。京子ちゃんとおまさちゃん用ってのは分かってるから吉野も熱心でね。鮑の黒い部分やギザギザをたわしで擦りとったんだよ」。内幕を披露し「おまさちゃんから声をかけてやれば喜ぶよ」と、親爺が冷やかした所へ宅配便が到着した。ウニが届いたみたい。

頭を下げて詫びるお兄ちゃんに「仕方ない。お疲れお疲れ」と労いの声を掛け荷物を受け取り「忙しそうだけど車、気を付けてな」と。実に弱者には優しい。

親爺がそのまま板場に行くと、宅配便と入れ替わりに珍味屋の大谷さん以下3人が入ってきて、遠野達の隣に陣取った。「今晩は」の挨拶は交わしたものの、この状況では歓迎できる客ではなかった。

仲居がその3人にお絞りとお通しを持ってきた時、親爺が水分を抜き取った塩水ウニを二皿にして運んできた。すでに摘まんだんだろう「最高級品だな、これは」と。中には“海の小判”と呼ぶ者もいるようだが、確かに濃い山吹色のウニを眺めてみると、なるほど、それだけの価値はありそうだ。

「京子ちゃんもおまさちゃんもどうぞ。利尻のバフンウニは今頃からお盆過ぎまでが一番美味しいらしいよ」。遠野が受け売りの知識で勧めると“言われなくても食べます”ってな感じで2人は早速スプーンで掬い口に入れた。直後に2人して「甘い!初めて」。声を発し、すぐに新しいのを掬った。

もともと美女2人に興味津々の大谷は様子を窺っていたのだろう。「ウニの瓶詰めはあるからいつでも言ってね。お嬢さん達には極上品をサービスするから」。軽口をたたいた。遠野はもちろん、美女2人もムッとしたのだが、すかさず「大谷さん。極めて無礼でございます」と親爺。大谷は深い意味は解せず「口を挟んでごめんごめん」で静かになった。

「さすが親爺。ま、大谷さんの戯れ言はともかく、そういやぁ、あの河野(外相)の言動には怒りとともに反吐が出そうになったよ。もう少しまともな世襲議員かと期待してたんだが、大臣になった途端『専用機が欲しい』とほざいてみたり、ああいうのに権力を持たせたらいかんなぁ。そう思わんか井尻!」

遠野は甘方を意識して問いかけた。梶谷はウニを食べ、酒を飲むを繰り返しながら、阿部秘書に先日の甘方VS別部の成り行きを報告している。井尻は返事のしようもなく、苦々しく梶谷の声を耳にしていたが、鮑が無くなりウニを食べた瞬間「甘い!」で顔も綻んだ。やはり食を楽しめば心にも余裕ができる。


源田威一郎

GENDA ICHIRO

大学卒業後、専門紙、国会議員秘書を経て夕刊紙に勤務。競馬、麻雀等、ギャンブル面や娯楽部門を担当し、後にそれら担当部門の編集局長を務める。
斬新な取材方法、革新的な紙面造りの陣頭指揮をとり、競馬・娯楽ファン、関係マスコミに多大な影響を与えた。
競馬JAPANの主宰・清水成駿とは35年来の付き合い、馬主、調教師をはじめ懇意にする関係者も数多い。一線を退いた現在も、彼の豊富な人脈、鋭い見識を頼り、アドバイスを求める関係者は後を絶たない。

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